以前の記事で少し触れてそのまま放置されていました講義についての話です。
1. 講義名・概要
The Development of Civilization
歴史を振り返り、現代社会に適用可能な示唆を抽出してビジネスに役立てる、というのが本来の目的のようです。
2. 問題
この講義の最大の問題は、「まったくビジネスに直結しないこと」、「(特に欧米系にとって)小中学校で学ぶことをやっている」ことだということです。
1) これまでの内容
これまですでに3回の授業がありましたが、1回目が中国の思想家(孔子、老子など)について、2回目、3回目がギリシア時代の哲学者(ソクラテス、プラトン、アリストテレスなど)、および神話(ゼウスなど)を取り上げていました。
2) 講義の進め方
これが一番驚いたのですが、「教科書を音読」です。学生が順番に教科書を音読し、そこに記載されている内容について感じたことを意見し、そこから他の学生とのディスカッションをする、というものでした。
3) 学生側からの講義
学生といってもMBA学生は社会人経験十分な大人ですので、こんな小学生みたいなことはしているなんて時間の無駄だ、と学生全員が感じていました。
日本の義務教育では神話を学ぶ機会は無く、哲学も社会の歴史もしくは高校の倫理の授業で習う程度ですが、欧米では幼稚園でも学ぶ内容です(と言っているクラスメイトがいました)。
一部の学生はすでに授業を放棄して出席が取られていることを確認して外に出る、PC広げて他のことをするなどしておりほぼ全員聞いていない授業です。
特にdual degree programで来ているアメリカ人は普段から声が大きいのですが、この講義に対しては通常の倍の声で文句をぶちまけていました。
でも、我々の限られた9月に始まってから初めて学生まとまってMBAオフィスに対して「改善もしくは講義内容の変更」を申請しました。
3. 結果
MBAオフィスからの回答は、講師は中国において最も著名な学者の1人であること、しかし英語で彼の知識を伝えるには限界があるためこのような状況になっていること、とは言え学生の抗議をそのままにしておく訳には行かないので、講師と相談して改善方法を模索する、という曖昧な回答でした。
正直何の改善も期待出来ないだろう、というのはこの回答から誰もが容易に予想出来ることですが案の定、講義は学生側の音読がなくなったものの読む人が学生から講師になっただけで学生側の負担がなくなっただけです。
従い、我々の要求の達成度としては20%程度と言ったところでしょうか。
個人的には引き続き改善を要求していくつもりです(止めたら現状に満足していると思われてしまうでしょう)。
4. 感想
この1件を通しての感想は、やはり北京大学MBAプログラムは発展途上であり、中国を志向してきた学生の要求に応える方法を模索している状況だ、ということです。
一方、清華大学においてもいわゆるハードスキル(会計、ファイナンスなど)以外に「about中国」の授業があるようですが、資料だけ少し見せてもらいましたが、現在の中国の状況を詳しく説明されており、これこそが留学生が求めるものなのではないか、と感じています。
中国でMBAを学ぶ意義というのは、欧米のMBAとは異なり自身でプログラムを作り上げていくことに貢献していくことにもあると思っています。
ある意味企業のコンサルティングと同じじゃないでしょうか。
欧米と同じレベル(講義の質、学生の質)を求めることはナンセンスであり、「MBA+α」を見つけて徹底的に追求していかないと時間を大きく無駄にする、ということを改めて感じた一件でもあります。